黒人が多数の陪審員だから、元妻殺害容疑でシンプソンは無罪になった

という、日本の参審制の裁判員裁判導入に反対した人からの意見があります。*日本当局者のいう、「市民感覚を裁判に」というのは意味不明すぎるのは確かですが

【陪審員制度の陪審裁判は、日本でよく行われている意味不明の説明、市民常識を裁判に持ちこむのが目的ではなく、司法という権力を市民が統制する、国家や法の正義の暴走を防ぐための民主国家の仕組みです】

まあ、市民も裁判官として参加する、参審制の裁判員と、法律が社会の正義に反していないかまでを考慮し、法律無効化の大権(Jury Nullification)まで持つ、陪審員が裁判官の採用した証拠を判定する、主にアメリカの陪審員裁判制度(制度はイギリスから始まり、各植民地で導入)は、市民が裁判で決定権を持つ点では似ていても、実質は大分異なるものです。

そもそもは、カトリック教会が事実上の司法権を握っていた英国では、12世紀になると、教会の司法権を弱めることが目的で、大昔のギリシャ時代とローマ帝国の初期にあった市民による裁判制度を復活させたようなものが、英国の陪審制度です。日本では、「英米での陪審員制度の裁判は、有罪か無罪かを議論によって決する。これは、英国とアメリカを含む旧植民地のキリスト教的な価値観に基づく人間観を反映した制度である」という得体のしれない日本語の駄文でもの書いてる一応は「ご立派な大学」法学者がいるそうです。が、全くの誤りで、もともとはキリスト教が生まれる前の古代ギリシャの民主司法に例をとったもので、12世紀のイングランド王国で、カソリック教会の司法権を通じた支配から王の独立を果たすため、古代ギリシャの民主政治時代にあった市民裁判制度(ローマ帝国時代には紀元前31年に古代市民陪審裁判は廃止、皇帝による帝国裁判官達による専門職裁判となりますが、拷問が普遍化していきます。ヨーロッパではルネッサンス時代にようやく陪審制度の復活が語られるようになる)を、別の形で復活させたのが英国旧植民地で盛んな陪審員裁判制度です。

その後、イギリス王室が無理な法律を乱発し、裁判官も王の気に入った解釈しか出さないことに貴族たちが大集結して、イギリス国王から譲歩の証拠として作られた、マグナ・カルタ=大憲章により、職業裁判官だけではなく自由市民陪審員たちの評決も裁判に必要とされ、王室の立法と司法独占が暴走しないように、自由民からなる陪審裁判制度は、犯罪を裁判にかける場合、法律そのものがそもそも正しいのかを判定する機関にもなりました。となり、この伝統は、英国の植民地の自治権でも多数導入制度化されるようになります。

陪審制度は、犯罪認定をするだけではなく、そもそも法制度が社会の良心を守るものかということを、国民の代表が審査する場所でもあり、法の条文でさばくことが間違っているという、社会の良心が広く存在する場合、法律的には有罪でもその法律の効力を停止させる権利ももつ、法律猿村の監視のためにある制度です。20世紀に入ってからも良心的な徴兵拒否活動を、明白な違法行為であっても無罪にする陪審員評決が多数出て、ベトナム戦争終結に一役買いました。

米国ではその他奴隷制廃止、禁酒法の廃止に陪審員たちの法律のほうが間違っているという法律無効化(Jury Nullification)が多数出され、これらの悪法や、やりすぎ法の撤廃に結びつけますし、イギリスでも軍事機密を漏らした役人が国家機密漏洩で裁判にかけられましたが、英国の公衆の関心にかなった行動であったと、市民選抜の陪審団が無罪にした例があります。

高度な法解釈が必要な現在では、市民裁判制度は時代の要請に合わないなどという駄文を書いて、阿呆試験(国家三流資格検定:司法試験と司法修習)の合格証抱きしめてる、どこぞの日本の阿呆村の人達が言うこととは、違う意味=司法権力と法の正義の監督を市民が行うのが陪審制です。日本の裁判官たちは自尊心で考えてる十分の一の知性もないというのは、経験上明らかなので、あまり自分たちを過大評価しないほうがいい。

【シンプソン事件で、黒人が大多数の陪審員が無罪をもたらしたと考えるのは早とちりというか、三文マスコミとか阿呆試験(司法試験)の権威を振りかざすゴミメディアしか読まない、仕事の学力小学生のおめでたい人たちの意見】

殺されたNicole Brown Simpson、Ronald Goldmanの遺族やマスコミは、刑事事件で負け、民事事件で勝ったのは、刑事事件の陪審は黒人が圧倒的で、民事事件の陪審は白人の方が多かったという事実から、陪審の人種構成が、この評価が別れた刑事事件(無罪)、と民事事件(何らかの責任はあるだろうから賠償せよ:ただその巨額さから言って直接犯の可能性も示唆する)の判決の差となったと騒ぎました。また日本の「昭和の仕事の学力小学生」の自称一流新聞などが、この見解を広めたので、おめでたく信用する人も日本には多いです。

シンプソンの刑事裁判で、黒人女性陪審員が増えるのをよろこんでいたのは、ロス検察の白人検事Marcia Clark本人です。日本やアメリカのゴシップ新聞のいう、シンプソン弁護団は、法廷戦略でほぼ全員を黒人陪審員にすることに成功したとかいう、アホ記事読んで、それがサモサも事実と書いてるインチキ知識人のニュースとかがありますが、検察のClark検事は黒人でも、黒人女性なら陪審大歓迎というのが本当です。

陪審員裁判は、人種差別撤廃や、独立運動で大きな成果を上げましたが、人種間の対立が絡む場合には、ネガな結果をもたらすこともあります。白人が陪審に多いと、白人の有利の評決が出やすい、逆もしかりなどのことです。これは、陪審員制度は、法の正義を超えた、「社会の正義」を政府や検察、裁判所から守る制度として始まったことから、避けられないことです。

イギリスの植民地支配と圧政、反乱と独立から、黒人奴隷の時代があり、何かしら今でも人種差別が残るアメリカでは、裁判を一般市民から選ばれた陪審員で決めるアメリカでは、陪審員は法律を無効化できる大権・Jury Nullificationがあり、この法律無効化大権は、法の正義を振りかざす政府や裁判所の横暴を防ぐ、社会の改革につながる多くの功績もあります。

もともとは陪審員制度の陪審裁判は、本国のイギリスの制度が、アメリカや他の植民地に導入されたのですが、本国政府からの圧政から救う制度として、大きく活躍したため残されていますが、植民地の反乱を助けた制度として煮え湯を飲まされた、本国のイギリスでは縮小されてきています。*ただし日本の裁判所などがのせる変な海外の陪審制度解説とは異なり、英国では必ずしも高度な判断が要求される事案で陪審が縮小されているのではなく、数は多いが中身はつまらない民事の近所の揉め事分野の、中傷などの名誉毀損でも、裁判官たちだけで行えるようにしたケースが多く、裁判所がこの件は陪審裁判にすると決めれば、陪審員たちに判断を任せる陪審制度での裁判もできるようになっています。

以下英国法務省が国民向けに陪審制度を解説するビデオ。

Your role as a juror

下の動画はオーストラリア(豪州)のNew South Wales州の地域司法局が州民に出している州の陪審制度の解説。

Welcome to Jury Service – with english sub-titles

一番陪審裁判が盛んなアメリカでも、大部分(9割前後)は検察と犯人が司法取引で、裁判所に行く前に事実上の判決を自分たちで決めてしまう(これで裁判にかかる費用などが節約できるし、検察もより凶悪事件に集中できる)、+希望すれば陪審抜きの裁判官の裁判になる州もあることから、陪審裁判にまでいく裁判は犯罪総数から言えば少ないわけです。

シンプソン裁判でも、12人の市民陪審のうち、9人までが黒人であったことから、シンプソンが無罪になったのは黒人が贔屓したからだという見解が出るのはそのためです。

しかし、この事件に関して言えば、黒人が多い陪審で勝ったとは、簡単に言えない事情があります。というのも9人の黒人はほぼ女性だったからです

シンプソン訴追にあたった, Marcia Clark検事は、ロス市警の「DNAを含んだ科学証拠」が、全米1の名声が今も続く科学鑑定人・Henry Lee博士【追記:当時からコネチカット州警察科学捜査所長で、コネチカット州警察及び、その後も全米の警察を指導してきた、警察検察側の科学捜査のエースで、アメリカでは、裁判長や検事より裁判で影響力のある人ですが、時たま被告側で仕事をすることがあり、シンプソン事件では被告側のドリームチーム弁護団の中核となった。シンプソン事件ではコネチカット州科学捜査班を動員してFBIやロス市警のおかしな現場検証を再調査しようとして、本来は同じ警察検察側の人間なのに証拠隠しなど、数々の嫌がらせを同業の検察とロス市警察から受けたと、その後、毎年の科学捜査の全国会議で喋ってきている】によって木っ端微塵とされ、Mark Fuhrman刑事の証拠隠滅疑惑に、刑事が黙秘いたしますと逃げたために、当初の楽勝ムードから、一転して完敗目前の火の車になってしまったので、シンプソンは妻に家庭内暴力を度々行っていて、離婚後も支配欲から、元妻のニコルを殺したという、女性の陪審員が同意しやすい方向からシンプソンを攻めようとします。

Marcia Clark検事はユダヤ系の白人ですが、黒人の女性たちから非常に人気がありました、黒人女性が陪審員になった裁判では、彼女たちはほぼMarcia Clark検事に好意的な投票を行ってきました。陪審員を経験した黒人女性たちはClark検事の応援会まで結成していたほどです。

また、アメリカの黒人女性は、有名になった途端に白人女性にうつつを抜かすような黒人は、あまり好きにならない傾向があり、特にシンプソンのように黒人妻を放り投げて、白人女達に走る類の黒人は裏切り者と考える人も多かった。このため黒人の中でも、女性に限って言えば、シンプソンは自業自得と考えていた人も実際多かった。黒人男性でも、この事件は黒人のコクラン弁護士を応援したのであり、黒人に背を向けていたシンプソンのことを支持したのではないという有名な黒人活動家がいました。*彼は後にコクランの葬儀でシンプソンに、兄弟【黒人同胞の意味】シンプソンよ、と呼びかけ、この見解を話してます。

このことから、黒人女性は私の味方、家庭内暴力の延長での殺人と畳み込めば、彼女たちは私に味方すると確信していたClark検事は、陪審員の入れ替えなどで黒人女性が圧倒的な数になる陪審構成に全く異議を唱えていなかった。

さらに、この線で確実に勝利をものにするため、シンプソンは、一番はじめの黒人妻にも暴力をふるっていたに違いないから、証言させようと、意気込んでこのシンプソンの黒人妻を「普段から家庭内暴力に満ちていたシンプソン」証人に呼ぼうとします。

しかし、この黒人妻はシンプソンとの結婚時代は、シンプソンを逆に虐待していた「かかあ天下」生活(数々の浮気を繰り返すシンプソンを殴っていたらしい)で、「シンプソンが家庭内暴力?あれが理由もなく女を殴るなんかあるわけがない」と逆上し、Clark検事の召喚を拒否し、逆に子供と再婚相手の夫を連れて、浮気で裏切ったシンプソンの応援を始めてしまい、Clark検事に好意的なことが多かった黒人女性陪審員たちは、同じ黒人のしかも捨てられた妻が、シンプソンは無罪だと必死に裁判所に通う様を見て、検察側を全く見限ってしまい、コクラン弁護士の尋問のときだけ熱心にメモを取り、検事たちが尋問とか討論するときは全く無視するようになる、全くの期待を裏切る結果となっていくわけです。

黒人の女性陪審員が増えることに一番恐怖していたのは、なんとシンプソン側の筆頭弁護士・ジョニー・コクランの方で、「白人女に走った黒人男=シンプソンに、黒人の女は否定的だ、これはエライコッチャ」と騒いでいたというわけです。

以下アメリカのこの事件を再現したドラマを、実際の事件の経緯と比べて解説した記事

‘The People v. O.J. Simpson’ Episode 4: The Rise of Cochran
By Danielle Henderson
New York Times Feb. 23, 2016
https://www.nytimes.com/2016/02/23/arts/television/the-people-v-oj-simpson-episode-4-recap.html

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過去記事

カテゴリー: 米国の裁判制度と陪審員裁判

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タグ: DNA鑑定が決定的とはなりにくかったシンプソン事件

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